春吉省吾のブログ

物書き・春吉省吾のブログです。マスメディアに抗い、大手出版社のダブスタに辟易して一人出版社を営んでいます。おそらく、いや、世界で最もユニークな出版社だと自負しています。

「永別了香港」33年の沈黙を破って上梓 VOL.71

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●今はない「啓徳空港」から離発着するジェット機。香港のビル街をすれすれに飛ぶ。
●香港ジョッキー倶楽部、「永別了香港」の主要ファクターとして登場する。
●香港の買い物市場はいつもお祭りだった。
香港島と九龍を結ぶフェリー。
天安門事件追悼キャンドル集会、2018ビクトリア公園。

本文

「永別了」(ウィンビットユウ)とは、「再会」(広東語でゾイキン、北京語でサイチェン)という、「また会いましょう、さようなら」という日常的な別れの言葉でなく、暇乞いという、かなり強い別れを意味する言葉で、ヘミングウェイの「武器よさらば」の原題、“A Farewell to Arms”の“Farewell”と同じである。
この作品「永別了香港」は、私の作家としての処女作だったが、暫く「封印」してきた。その理由は何れ明かすとして、単純ではない。10年前に電子書籍のある販売ブログにアップしようとして直ぐに思い止まり、完成形の作品は誰の目にも触れていない。一部修正して上梓出来る目処がついたのは、アマゾンKindleのソフトを作家の私自身が自由に編集できるようになったからだ。
私はその、Kindle版の「永別了香港」の扉コピーにはこう記載した。

香港返還(1997.7.1)の10年前、1987年(昭和62年)独りの日本人が偶然にも「香港」と関わり、持てる力の全てを尽くし、ビッグイベントに立ち向かった数奇な物語。
果たして、純文学か、禁断・背徳の小説か、異端のラブストーリーか、破天荒な経済小説か、推理小説か、日本の裏側を抉った暴露小説か……。人間の哀しさと愛おしさを一人の人間の成長を通して多面的に描き上げた「永別了香港」。日本人が、これまで書けなかった、リアルな日本・香港・中国がこの物語の中にある!!超長編でありながら、読者は吸い込まれるように先を読んでしまうはずだ。
上梓直前で思い止まり、長く封印していた、春吉省吾の処女作品「永別了香港」全5巻。スリルと猥雑、欲望に満ちた香港・中国、日本の闇が描かれている。
2020.6.30「香港国家安全維持法」が施行された。不幸なことだが「香港終焉」の端緒は、この超長編、ノンストップ・エンターテインメント・ノベルに全てが活写されている。 

悲しいことに、猥雑でエネルギッシュな自由都市香港はもはや風前の灯火となった。当時のことを香港で語ることも出来なくなった。中国共産党の愚策・弾圧によって全てが閉ざされたからだ。
この小説「永別了香港」を上梓する意志が私の中で、俄に高まったのはそういう理由からだ。
今から30年前の1989年6月4日、北京の天安門広場で、民主化を求める学生や市民が、中国共産党の手で虐殺された「天安門事件」。中国共産党がもっとも隠蔽したい事件だ。当時の最高実力者鄧小平一派が犯した中国共産党最大の汚点である。以来、中国本土では徹底してこの事件を抹殺し、日本の政府・与野党・財界・あらゆるメディアも中国共産党に媚び、忖度した。
しかし一国二制度のもと香港市民は弾圧に耐え、これまで、ビクトリア公園に集まって、抗議の意志を伝え続けてきた。
2020年6月30日、中国の全国人民代表大会全人代、国会に相当)常務委員会は「香港国家安全維持法案」を全会一致で可決した。
この国家安全維持法は、「国家分裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力と結託して国家に危害を加える行為という四つの活動を犯罪行為と定めているとんでもない悪法だ。
7月14日の「ニューズウイーク日本版」で、記者デービット・ブレナンは「香港の挽歌」と題して、「自由都市・香港が香港でなくなる日」“NOBODY CAN SAY NO TO BEIJING”の著名記事にはこうある。
「30年という歳月のせいではない。1989年のこの日に北京の天安門広場民主化を求める無数の人々が中国共産党の手で虐殺されて以来、香港市民は毎年、この公園に集まって抗議の意思を表してきた。中国側は、天安門事件を何としても歴史から抹殺したい。それでも従来は、特別行政区である香港とマカオでの追悼式典は黙認してきた。しかし今年は違った。新型コロナウイルウス感染防止を口実に、当局はビクトリア公園での集会を禁じた」
国家安全法の適用が決まった翌日、香港トップの林鄭月娥(キャリーヤム)行政長官は、香港市民宛の書翰を発表し、今の香港は「国家安全保障上の大きな穴」であり、その「繁栄と安定が危険にさらされている」と主張した。(中国政府の立場から見るとそういうことになる)
国家安全法の適用によって、香港でのデモや集会は勿論のこと、反体制的なメディアへの圧力、過去に遡って批判的な投稿した者達も逮捕される。インターネットの規制も、芸術学問的表現の自由も規制される。宗教団体の圧力の対象も取締の対象になる。ジャーナリストも批判記事を書けば逮捕される。
事実、この8月10日、香港のメディア王で民主活動家の黎智英(ジミー・ライ)氏が逮捕、「学民の女神」と呼ばれた元政治運動家、周庭(アグネス・チョウ)さんも逮捕された。容赦ない後ろ手錠で、周庭さんが連行されていくニュースは衝撃的だった。彼女は勿論、天安門事件前までの自由闊達な、私の描く「永別了香港」に描かれた「香港」を知らない世代だ。
一時期、封印したこの「永別了香港」は、習近平政権下で、自由を剥奪されてしまった香港の人々に読んでほしいという思いもある。(正しく翻訳されての話だが)
33年前のおよそ3年間、私が直接間接に関わった「自由香港」は抹殺された。書き始めた当時、二度と香港には関わらないと自戒を込めてつけた小説のタイトルだったが、「永別了香港」というこのタイトルは、歴史的重みを持ったタイトルとして大きく変容した。
この小説上梓によって中国政府がそう判断すれば、この先私が香港や中国に行けば、この悪法によって逮捕されることもある。また、中国と「犯罪人引渡し条約」を締結している国に行けば、拘束されることもある。国家安全法とはそういう、とんでもない法律である。

nonstop entertainment novels 「永別了香港」は、今から33年前の3年間、東京・渋谷、香港、シンガポール、台湾、珠海、マカオが舞台になっている。
日本はまさにバブル絶頂期、その流れに取り残された30半ばの零細企業イベント・広告会社の経営者が、ひょんな事から、香港に関わることになった。全てが偶然か、必然か……。
物語は1986年(昭和61年)12月、クリスマスイブ、東京・渋谷、音楽業界のたまり場となっていた渋谷公園通りのスナック「道」に、ある男が閉店前、ひょっこりと現れた事から、物語がはじまる。
「永別了香港」は、現在世界を相手に第一線で活躍している日本人は勿論、世界中に散ってしまった、華僑、香港人にもぜひ読んで欲しい作品である。同時に、日本の特殊な業界や政界の裏の動きも書き込んである。30年前の澱が更に異臭を放ち、のっぴきならなくなった「今」の日本。
新型コロナによって、戦後75年の隠蔽されてきた既得権益がすべて暴かれた。これを抛っておけば、日本の未来は暗い。その未来をなんとか打破しようと行動するとき、「永別了香港」は、精神的起爆剤になるような物語だ。
「永別了香港」Kindle版・全5巻「nonstop entertainment novels 」は、司馬遼太郎氏の「竜馬がゆく」文庫本全8巻とほぼ同じ文字数だが、貴方は、面白くて、あっという間に読み切るだろう。見えない未来に、本気で立ち向かおうとしている日本人、香港人、真の人権を守ろうとする中国人に贈る。9月上旬に上梓します。         
2020年8月20日   春吉省吾 ⓒ

 

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